979年日本最大のサイエンスシティー・筑波研究学園都市で活躍する人材を育成するため、筑波大学・東京教育大学の同窓会「茗溪会」によって創立された茗溪学園中学校高等学校。近年ではバカロレア認定校となるなど、国際教育により一層の力を入れています。本記事では、そんな茗溪学園中学校高等学校について詳しくご説明いたします。
目次
- 茗溪学園中学校高等学校基本情報
- 茗溪学園中学校高等学校の取り組み
- 茗溪学園中学校高等学校で過ごす6年間
- 茗溪学園中学校高等学校の進学率
- 入試情報
1.茗溪学園中学校高等学校 基本情報
学校名 | 茗溪学園中学校高等学校 |
所在地 | 〒305-0061 茨城県つくば市稲荷前1-1 |
電話番号 | 029-851-6611 |
国立・私立 | 私立 |
共学・別学 | 共学 |
設立学科 | 普通科 |
学期 | 2学期制 |
建学の理念
「人類ならびに国家に貢献しうる『世界的日本人』を育成すべく、知・徳・体の調和した
人格の形成を図り、特に創造的思考力に富む人材をつくる」
茗溪学園中学校高等学校とは
1979年、茗溪学園中学校高等学校(以下、茗溪学園)は、当時の学力偏重の中等教育批判に応える教育実験校として、筑波研究学園都市の研究者子弟育成を目的に創設された中高一貫校です。
以来、時代・環境の変化に対応しながら、「筑波」に位置することから科学技術分野の教育、また理念にも掲げられている世界的日本人の育成のため、一貫して国際教育に重点を置いています。
さらに運動部・文化部ともに部活動が盛んで、個人課題研究という高校2年次の必修科目を見ても、受験に特化した学習のみならず、総合的な観点で生徒の育成に取り組む学校です。
中高一貫校としての茗溪学園
茗溪学園では中高一貫校として、計6年間生徒を手厚く育成する学校です。
また、中高一貫校に多くある慣わして、中学校3年間の後にくる高校1年生を4年生、高校2年生を5年生、高校3年生を6年生と呼びます。
じつは中高一貫校は公立校を中心に年々増加しています。とくに茗溪学園が位置する茨城県は、名門公立高校が続々と中高一貫化しており、その数は合計13校。
東京都の中高一貫校の合計数は区立校を含めても11校ですので、茨城県が全国でも際立って中高一貫教育に熱心であることがわかります。
中高一貫化することで進学率が向上、また原則高校受験がないことが精神的あるいは時間的ゆとりとなり、文化・スポーツの双方において内部進学生が各種大会・コンクールで成績を上げやすいというデータもあります。
このような潮流の中でも茗溪学園は後述するような個人課題研究という探究活動を通じて、県内の中高一貫教育をリードしています。
2.茗溪学園中学校高等学校の取り組み
茗溪学園は教育の根幹に6つのStudy Skillsを置き、さまざまな教育プログラムを実践しています。まずはこのStudy Skillsから、茗溪学園の教育面の特徴をご紹介しましょう。
①Knowledge(知識)
「生きた教育」「本物の教育」を掲げる茗溪学園では、通常の授業でも大学院や実社会で豊富な経験を積んだ教員が、創意工夫に富んだ授業をおこなっています。また、中学校で基礎学力を固めて、高校での高度な授業を保証するため、教科ごとに独自の教育計画を設けています。
②Experience(経験)
教室での座学だけではなく、フィールドワーク、つまり現地での実地体験を通じて「経験」を培うことにも注力しています。この活動によって、生徒たちが実社会でも通用する知恵や創造性、勤勉さを身に付けることが期待できます。
③Strength(体力)
茗溪学園が実施する校外学習は「経験」を得られるだけではなく、生徒が自分の足で動き回るため「耐力(体力)」の育成にもつながります。その他、臨海訓練や校技大会などの行事を通じても、生徒たちの心身を鍛錬しています。運動部の活動も盛んでラグビー部や剣道部などが全国大会で目覚ましい成績を上げています。
④Creativity(創造性)
創造性を育むために必要な「感性」を磨くために、開校以来音楽や芸術など情操面を磨く教育を実施しています。また、SSH指定校でもあった茗溪学園は、化学などの分野においても、豊富な教育ノウハウに裏打ちされた実験や調査活動の授業を取り入れ、生徒たちの創造性を育んでいます。
⑤International Understanding(国際性)
茗溪学園では創設以来、一貫して国際教育に力を入れていますが、近年でも国際バカロレア認定校(詳細は後述)となるなど、その特色は一層強まっています。また、同校は国際教育科を設置しており、生徒の留学相談・準備、留学生の受け入れなどをおこなっています。
⑥Information and Communication Technology(ICT)
茗溪学園が情報教育で重視しているのは、人対人のコミュニケーション力です。そのため単なるIT教育にとどまらず、一人ひとりの気持ちを大切にしたメッセージの交換、人に優しい表現、自分の考え・アイデアを効果的に伝える能力の育成を目指しています。さらに、茗溪学園はコロナ禍で茗溪学園では全国初のオンライン生徒会選挙を実施するなど、他校に先んじた数多くの試みをおこなっています。
※ICT
情報通信技術のこと
つぎに、茗溪学園のおこなう教育プログラムの中でも、特筆すべきものをご紹介します。
●SSHプログラム
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とは、文部科学省が理科・数学教育に力を入れる高校を指定した上で、各校の研究開発・実践活動を予算面で支援する制度のことです。毎年約30校程度の高校が5年間の指定期間で選出されます。茗溪学園は2011年からSSH指定校に登録され、2017年には文部科学省から第2期目の指定を受けました。
SSH指定校としての茗溪学園の強みは、「生徒全員が対象であること」「探究スキルを習得できる授業を中学1年次から段階的に行っていくこと」「国内外でのフィールドワーク等、希望者対象の様々な取り組みがあること」の3つが挙げられます。
茨城県内のSSH指定校(2022年度)
その他にも茨城県内では以下の高校がSSHに指定されていますのでご参考にしてください。
●クロスカリキュラム
また、茗溪学園では理系科目に注力するのみならず、クロスカリキュラムという教科横断的な視点に立った授業もおこなっています。クロスカリキュラムは全学年全教科を対象に実施され、生徒たちの1つの事象を多角的に検討する力や問題解決能力の育成、また知的好奇心の喚起が期待されています。
●17歳の卒業論文・個人課題研究
上記のStudy Skillsの集大成であり、SSHプログラムの中核をなすのが高等学校2年次必修の「個人課題研究」です。「17歳の卒業論文」とも呼ばれる、茗溪学園独自の教育プログラムで、1年間を通じて、生徒たちそれぞれが興味・関心を持つ分野の研究に取り組みます。また、「筑波」という地の利を活かし、生徒が大学や研究機関に赴いてアドバイス等を受けることもあります。
上記で紹介した研究テーマはあくまで一例です。その他にも生徒たちの興味・関心に基づくユニークな研究を、茗渓学園はサポートしています。
茗溪学園のこのような取り組みは、探究学習として位置づけられるものです。探究学習とは、生徒自らが設定した課題を、周囲の協力を得ながら進めて行く活動のことで、生徒の思考力や判断力、表現力の育成が期待されます。学習指導要領の改訂により、探究学習は2022年度から必修化されました。それぞれの高校が独自にどのような探究学習を行っているかは、志望校を決める指標として今後さらに重要性を増して行くでしょう。
●IBDPカリキュラム
茗溪学園は2016年7月に国際バカロレア(IB)・ディプロマプログラム(DP)校として認定されました。
IBとはジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する国際的かつ総合的な教育プログラムのこと。世界の複雑さを理解して対処できる生徒を育成し、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与えることを目的としています。
DPは16歳~19歳までを対象としたプログラムのことです。DPでは所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験で所定の成績を収めると、国際バカロレア資格が取得できます。
令和4年12月31日時点で、IB認定校は全国で191校、そのなかでもDP認定校は66校です。また、茨城県でDP認定校は2校。そのうち、DPの一部科目を日本語でも実施可能な日本語DP実施校に限っては、茗溪学園だけです。
近隣県において日本語DP実施校が埼玉県と東京都に3校あるだけ(下記の表を参照)である現状を踏まえても、茗溪学園が関東圏有数の国際教育に特化した学校だと言えるでしょう。
3.茗溪学園中学校高等学校で過ごす6年間
●6年間のクラス編成
茗溪学園中学校高等学校には現在、基本となるMGクラス(中学メインクラス)、上記でも言及した国際バカロレア資格が取得できるIBクラス(国際バカロレアクラス)、そして2021年に開設されたACクラス(アカデミアクラス)の3つが存在します。
MGクラスが4クラス、ACクラスが2クラスの計6クラスで構成されており、グローバルコース(詳細は後述)の生徒も試験を受ければ、ACクラスへの編入が可能(※英語の授業のみ別クラスで受講)可能です。また、これまで高校にはACクラスがありませんでしたが2024年度からスタート。高校入試でも1クラス募集し、計3クラスのACクラスが設けられます。
IBクラスを希望する生徒は、高校一年次はMGクラスかACクラスのどちらかに所属。高校二年次からIBクラスへ所属します。
ACクラス(アカデミアクラス)
ACクラスは国内だけはなく、海外の難関大学への進学を実現するために、2021年に創設された新しいクラスです。
グローバルコース
また、国際教育に力を入れている本校では、中学校にグローバルコースという英語の授業のみ特別クラスでおこなうコースを実施しています。グローバルコースには、G1クラスとG2クラスの2種類がありますが、両者ともアメリカの中学校で使われテキストを用いてさまざまなトピックの読解授業をおこなうほか、語彙力強化のための定期的な小テスト、DVD教材を用いた授業を実施します。
●年間行事
茗溪学園では1年間に以下の行事があります。
●クラブ活動
茗溪学園では運動部・文化部ともに盛んです。以下のように、近年でも大会等で目覚ましい実績を挙げています。
運動部
文化部
その他にも吹奏楽部/室内楽部/文芸部/合唱部/ギター部/地歴部/落語研究会/茶道同好会/イラスト同好会/ボランティア同好会といった文化部が活動しています。
4.茗溪学園中学校高等学校の進学率
筑波大学/東京教育大学の同窓会「茗溪会」によって創立された茗溪学園ですが、令和4年(2022年度)は15名の生徒が筑波大学に進学しました。その他難関国立10大学に7名、医学部医学科に3名が現役合格しています。
国公立大学・大学校
合格者数65名
私立大学
合格者数622名
その他、国際教育に注力する茗溪学園では海外大学への進学実績も豊富です。
5.入試情報
最後に茗溪学園の2023年度の入試情報についてご紹介します。
●茗溪学園中学校入試情報
茗溪学園の中学校入試はMGクラス・ACクラスごとに分かれており、それぞれに専願の推薦入試があります。また、帰国子女や高い英語能力を持つ児童を対象とした入学試験も実施しています。
近年の倍率
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
一般1 | 2.3 | 2.5 | 2.9 |
一般2 | 3.8 | 3.6 | 3.9 |
推薦 | 1.7 | 1.8 | 1.7 |
●茗溪学園高校入試情報
茗溪学園の高校入試は、一般入試、推薦入試 (専願)、帰国生対象入試、IBDP コースの受講を希望する者向けの入試に大別されます。
近年の倍率
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
一般 | 1.6 | 1.26 | 1.95 |
推薦 | 1.0 | 1.0 | 1.0 |